【理事長になったらまず読みたい】清掃会社の見直し完全ガイド - 組合の合意形成から業者選定まで失敗しない全手順

「来期は理事長をお願いします」

マンションの総会や理事会で、ある日突然、輪番制で理事長の重責を担うことになった。不動産管理の専門家ではないのに、大切な共有資産であるマンションを守る責任と、多くの居住者の視線に、大きなプレッシャーを感じていませんか?

「何から手をつければいいのか分からない…」
「専門的なことはよく分からないし、失敗したくない…」

そのように感じている、あなたのためにこの記事はあります。

理事長が最初に取り組むべき課題の一つに、「マンション管理における清掃業務の見直し」があります。清掃は、マンションの美観を保つだけでなく、資産価値や住民満足度に直結する非常に重要な業務です。しかし、その重要性とは裏腹に、多くは前任者から引き継いだまま、何年も見直されていないケースが少なくありません。

この記事では、専門知識がない方でも自信を持って清掃会社の見直しプロジェクトを主導し、理事会や総会での合意形成を成功に導くための具体的な手順を、ステップ・バイ・ステップで徹底的に解説します。

この記事を読み終える頃には、あなたは清掃会社の見直しに関する不安が解消され、理事長として大きな一歩を踏み出す自信を手にしているはずです。さあ、一緒に取り組んでいきましょう。

なぜ今、マンションの清掃会社を見直すべきなのか?

まずはじめに、「なぜ、わざわざ時間と労力をかけてまで清掃会社を見直す必要があるのか?」という根本的な疑問にお答えします。現状維持は楽な選択ですが、見直しにはそれを上回る大きなメリットが存在します。

資産価値の維持・向上に直結するから

マンションの資産価値を測る上で、「管理状態の良さ」は極めて重要な指標です。特に、マンションの購入を検討している内覧者が最初に目にするのは、エントランスや廊下、ゴミ置き場といった共用部分です。

■エントランスの床に汚れやホコリが溜まっている。
■廊下の照明に蜘蛛の巣が張っている。
■ゴミ置き場から悪臭がする。

もし、このような状態であれば、内覧者は「このマンションは管理が行き届いていないな」というネガティブな印象を抱き、購入意欲が削がれてしまいます。これは、既存の住民が売却する際の価格にも影響します。

質の高いマンション管理と清掃は、物件の第一印象を良くし、「このマンションは大切に管理されている」という安心感を与え、資産価値の維持、ひいては向上に繋がるのです。

住民満足度が管理組合運営を円滑にするから

「いつもきれいで気持ちがいいね」

住民が日常的に利用する共用部分が清潔に保たれていることは、日々の暮らしの快適さに直結し、住民満足度を高める最も分かりやすい要素の一つです。満足度の向上は、マンションへの愛着を育み、管理組合の活動への協力的な姿勢を生み出します。

逆に、「清掃が行き届いていない」という不満は、管理組合への不信感に繋がりやすく、「管理費を払っているのに…」というクレームの原因になります。このような不満は、理事会や総会での他の議題に対する協力姿勢にも悪影響を及ぼしかねません。

清掃の見直しを通じて住民満足度を高めることは、理事長であるあなたの信頼を高め、今後のより円滑な組合運営の礎となるのです。

コストが本当に適正か見直す絶好のチャンスだから

何年も同じ会社と契約を続けている場合、そのサービス内容と価格が現在の市場やマンションの状況に合っているか、定期的に検証する必要があります。

■契約当初からサービス内容が変わらないのに、料金だけが上がっている。
■他の会社なら、もっと安く、もっと質の高いサービスが受けられるかもしれない。
■マンションの住民構成が変わり、必要な清掃の範囲や頻度も変わってきている。

複数の会社から見積もりを取る「相見積もり」を行うことで、現在の契約が適正価格であるかを客観的に判断できます。ただ安くするだけでなく、同じコストでより手厚いサービスを受けられる可能性もあります。管理費という住民から預かった大切なお金を、最も効果的に活用するために、清掃の見直しは避けて通れないプロセスなのです。

【ステップ1】現状把握:まずは自分たちのマンションを知る

清掃会社の見直しを具体的に進める前に、まずは「現状」を客観的に把握することが重要です。今の清掃にどんな課題があり、住民は何を求めているのかを明らかにしましょう。

3分でできる!清掃品質満足度チェックリスト

まずは、あなた自身の目で、現在の清掃品質をチェックしてみましょう。以下のリストを手にマンションの共用部分を歩き、客観的な視点で評価してみてください。「はい」「いいえ」「どちらでもない」で答えるだけで、課題が明確になります。

チェック項目 はい いいえ どちらでもない
【エントランス・ホール】
エントランスのガラスドアに手垢や汚れはないか?
床(タイル等)に砂やホコリ、黒ずみはないか?
集合郵便受けの上にホコリは溜まっていないか?
【廊下・階段】
床の隅にホコリやゴミは溜まっていないか?
照明器具や消火器にホコリや蜘蛛の巣はないか?
手すりにベタつきや汚れはないか?
【エレベーター】
カゴ内の鏡や操作パネルはきれいか?
床の溝にゴミは詰まっていないか?
【ゴミ置き場・その他】
ゴミ置き場は整理され、悪臭や汚れはないか?
駐車場や駐輪場にゴミや落ち葉は放置されていないか?

このチェックリストで「いいえ」が多ければ多いほど、清掃品質に課題がある可能性が高いと言えます。この結果は、後の理事会での説明資料としても活用できます。

理事会メンバーや他の住民へのヒアリングのコツ

次に、あなた以外の人の意見も聞いてみましょう。他の理事や、普段から親しい住民の方に、それとなく清掃についてどう思うか尋ねてみてください。

「最近、マンションの清掃について何か気になるところはありますか?」
「もう少し、ここがきれいになったら嬉しい、という場所はありますか?」

このように、オープンな質問を投げかけることで、自分では気づかなかった問題点や要望が見えてくることがあります。「ゴミ置き場のルールが守られていない」「雨の日の翌日はエントランスが特に汚い」など、具体的な声を集めることが重要です。これらの「生の声」は、見直しの必要性を訴える上で強力な根拠となります。

【ステップ2】理事会での問題提起と合意形成

現状把握ができたら、いよいよ理事会で見直しを提案します。ここで重要なのは、独断で進めるのではなく、他の理事の理解と協力を得て、「理事会としての決定事項」にすることです。

なぜ見直したいのか?目的を明確にする

理事会で提案する際は、感情的に「汚いから変えたい」と訴えるのではなく、ステップ1で集めた客観的な事実(チェックリストの結果や住民の声)を元に、見直しの目的を論理的に説明します。

■目的の例
・住民満足度を高め、快適な居住環境を実現するため。
・マンションの資産価値を維持・向上させるため。
・現在の清掃コストが適正かを見極め、管理費を有効活用するため。

これらの目的を明確にすることで、理事会での議論の方向性が定まり、単なる業者批判ではない、前向きなプロジェクトとして認識してもらえます。

反対意見を想定した説明資料のポイント

理事会では、様々な意見が出ることを想定し、あらかじめ回答を準備しておきましょう。特に、以下のような反対意見や懸念が予想されます。

「わざわざ変えるのは面倒だ」「今のままで特に不満はない」という意見には?

→「もちろん、今の会社にも良くやっていただいている点はあります。しかし、より良いマンションにしていくためには、定期的な見直しが必要です。ステップ1のチェックリストの結果をお見せし、客観的に見ると改善の余地がある点をご説明します。これは問題探しではなく、より良くするための第一歩です。」と、現状を肯定しつつ、改善提案であることを強調します。

「コストが上がるのではないか?」という懸念には?

→「コストが上がる可能性もゼロではありませんが、逆に下がる可能性、あるいは同じコストでサービス内容が向上する可能性もあります。まずは複数社から見積もりを取り、比較検討することではじめて、現在のコストが適正か判断できます。今回は、あくまで『比較検討のための見積もり取得の承認』をお願いしたいのです。」と、今回のゴールが契約変更ではなく、比較検討であることを明確に伝えます。

見積もり取得の承認を得る

理事会でのゴールは、「清掃会社の見直しを検討し、複数社から見積もりを取得すること」について、理事会の承認を得ることです。議事録に「理事会として、清掃会社の見直しを検討することを決議した」と記録を残せれば、このステップは成功です。これにより、あなたの個人的な提案ではなく、管理組合としての公式な活動として、次のステップに進むことができます。

【ステップ3】清掃会社の選定と比較検討

理事会の承認を得たら、いよいよ新しい清掃会社の候補を探し、見積もりを依頼します。ここが、見直しプロセスの核心部分です。

信頼できる会社の探し方(3つの方法)

やみくもに探すのではなく、信頼できる会社を効率的に見つけるために、以下の方法がおすすめです。

1.現在の管理会社に紹介してもらう
現在の管理会社が、マンション管理の一環として清掃業務を別の専門会社に委託している場合があります。その場合、管理会社に他の提携清掃会社を紹介してもらうのが最も手軽です。ただし、紹介される会社が本当にベストな選択肢とは限らないため、他の方法と並行して検討しましょう。

2.近隣のマンションの理事長に聞いてみる
もし可能であれば、近隣のマンションで管理状態が良いと感じる物件の理事長や住民に、どの会社に依頼しているか尋ねてみるのも有効な方法です。実際にサービスを利用している人の生の声は、何より信頼できる情報源となります。

3.インターネットで専門会社を探す
「マンション管理 清掃 東京都」や「マンション清掃 専門会社」といったキーワードで検索すれば、多くの会社が見つかります。その際は、ウェブサイトに実績やサービス内容が具体的に掲載されているか、会社の理念や強みが明確か、といった点を確認しましょう。地域に根差した経験豊富な会社は、柔軟な対応が期待できる場合があります。

最終的に、3社程度の候補に絞って見積もりを依頼するのが一般的です。

見積もり依頼で必ず伝えるべきこと

各社に同じ条件で見積もりを出してもらうために、依頼時には以下の情報を正確に伝えましょう。これが曖昧だと、後で比較するのが非常に困難になります。

物件の基本情報
 ・マンション名、所在地
 ・総戸数、階数
 ・共用部分の図面(あれば)

現在の清掃仕様
 ・日常清掃の頻度(例:週3回)、時間、人数
 ・定期清掃の頻度(例:年2回)と作業内容(例:床洗浄、ワックス塗布)
 ・現在の月額・年額の費用

見直しで改善したい点・要望
 ・ステップ1で明らかになった課題(例:ゴミ置き場の重点的な清掃、廊下の蜘蛛の巣除去)
 ・追加でお願いしたい作業(あれば)

これらの情報をまとめた依頼シートを作成し、各社に同じものを提出するのが確実です。多くの会社は、見積もり提出前に「現地調査」を希望します。これは、より正確な見積もりを出すために不可欠ですので、ぜひ受け入れましょう。その際の立ち振る舞いや質問への回答の的確さも、会社を見極める良い機会になります。

見積書で価格以外に必ず比較すべき7つの重要ポイント

各社から見積書が提出されたら、いよいよ比較検討です。金額の安さだけに飛びついてはいけません。安いのには理由があります。以下の7つのポイントを総合的に評価し、最もコストパフォーマンスの高い、信頼できるパートナーを選びましょう。

1.作業範囲と仕様は明確か?
 「日常清掃一式」といった曖昧な表記ではなく、「どこを」「何を」「どのように」清掃するのかが具体的に記載されているかを確認します。会社の担当者に、この仕様でステップ1の課題が解決できるかを直接質問してみましょう。

2.定期清掃の内容は充実しているか?
 日常清掃では落としきれない汚れを除去し、建材を保護するのが定期清掃の役割です。床の洗浄だけでなく、高圧洗浄やガラス清掃など、マンションの特性に合ったメニューが提案されているかを確認します。

3.報告・連絡体制はしっかりしているか?
 作業報告書は提出されるのか、その形式(写真付きかなど)はどうか。何か問題が発生した際の緊急連絡先や対応フローは明確か。密なコミュニケーションが取れる体制は、安心感に繋がります。

4.スタッフの品質管理・教育体制は?
 実際に作業するのは現場のスタッフです。スタッフへの教育制度や、現場をチェックするスーパーバイザーの存在など、品質を担保するための仕組みがあるかを確認しましょう。身だしなみや挨拶といった基本的な教育も重要です。

5.損害賠償保険に加入しているか?
 万が一、清掃作業中に備品を破損してしまった、床を傷つけてしまったといった物損事故が発生した場合に備え、会社が損害賠償保険に加入しているかは必須のチェック項目です。

6.柔軟な対応力はあるか?
 「総会前にエントランスを特別に清掃してほしい」「台風の後に落ち葉の清掃を追加でお願いしたい」といった、突発的な要望に柔軟に対応してもらえるか。小回りの利く会社は、いざという時に頼りになります。

7.担当者の専門性と人柄は信頼できるか?
 最後は、人と人との相性です。こちらの質問に的確に答え、専門的な知見からより良い提案をしてくれるか。理事長の立場に寄り添い、親身に相談に乗ってくれるか。長く付き合えるパートナーとして信頼できる担当者かを見極めましょう。

これらのポイントを比較検討し、理事会として推薦する会社を1~2社に絞り込みます。

【ステップ4】総会での承認と契約

最終ステップは、管理組合の最高意思決定機関である「総会」で、清掃会社変更の承認を得ることです。ここを乗り越えれば、ゴールは目前です。

プレゼンテーションの成功の鍵は「分かりやすさ」

総会では、専門家ではない一般の住民の方々に向けて説明します。成功の鍵は、誰にでも理解できるよう、分かりやすく簡潔に伝えることです。

プレゼンテーションの構成案
 1.見直しの経緯と目的(なぜ見直す必要があったのか)
 2.比較検討のプロセス(何社を、どのように比較したのか)
 3.推薦する会社の紹介(なぜこの会社がベストなのか。価格だけでなく、サービス品質や信頼性の面から説明)
 4.変更によるメリット(住民にとって、どのような良いことがあるのか。美観向上、コスト削減など)
 5.質疑応答

比較表などを用いて、視覚的に訴えるのも効果的です。理事会で事前にリハーサルを行い、他の理事からフィードバックをもらうと、より完成度の高いプレゼンになります。

新しい会社との契約で注意すべき点

総会で無事に承認されたら、新しい会社との契約手続きに進みます。契約書にサインする前に、以下の点を最終確認してください。

■契約期間と更新・解約の条件
■見積書通りのサービス内容が契約書に明記されているか
■支払い条件

不明な点があれば、必ず事前に確認し、納得した上で契約を結びましょう。また、現在の会社との解約手続きも、契約内容に従って適切に進める必要があります。これまでお世話になった感謝を伝え、円満に終了することも忘れてはいけません。

まとめ:清掃の見直しは、より良いマンションライフの第一歩

ここまで、本当にお疲れ様でした。清掃会社の見直しという一大プロジェクトをやり遂げたことは、理事長として大きな実績であり、自信になったはずです。

一連のプロセスを振り返ってみてください。現状を分析し、課題を特定し、理事会や総会で合意を形成し、業者と交渉し、決定する。この経験は、マンション管理における清掃という枠を超え、今後、管理組合が直面するであろう様々な課題(大規模修繕、規約の変更など)に応用できる、非常に価値のあるものです。

あなたが主導したこの活動によって、マンションはより清潔で快適な場所になり、住民の満足度は向上し、資産価値も守られました。その成果は、理事長であるあなたの信頼を高め、今後の管理組合運営をより円滑にしてくれるでしょう。

これは終わりではなく、始まりです。より良いマンションライフを実現するための、記念すべき第一歩なのです。


東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、山梨県、福島県、新宿区、横浜市、千葉市、さいたま市、仙台市、山形市にてマンションの管理や清掃の会社をお探しでしたら、40年以上の経験と柔軟な対応力が強みの保全管財までお気軽にご相談ください。理事長様のお悩みに寄り添い、最適なご提案をいたします。