清掃品質は「仕様書」で決まる!理事会を納得させるマンション清掃の見積もり・業者選定術

「最近、マンションのエントランスが薄汚れている気がする…」
「住民の方から、廊下のゴミがずっと放置されていると指摘を受けた…」
「今の清掃会社に、本当にこのまま任せていて大丈夫なのだろうか…」

輪番制で管理組合理事長に就任された您は、このような悩みを抱えていませんか?
専門家ではないからこそ、何から手をつければ良いのか分からず、責任の重さにプレッシャーを感じていらっしゃるかもしれません。

マンションの美観や衛生環境は、住民の満足度に直結するだけでなく、物件の資産価値そのものを大きく左右する重要な要素です。そして、その品質を支えるのが「マンション管理」の中核業務である「清掃」です。

しかし、多くの管理組合が「今の業者に長年任せきり」「見積もりを取っても価格の比較しかできない」といった状況に陥りがちです。

この記事では、そんな理事長様のために、理事会や総会での合意形成をスムーズに進め、かつマンションの資産価値を確実に向上させるための「清掃業者の見直し術」を、具体的かつ分かりやすく解説します。

その鍵を握るのが、「清掃仕様書」です。

この記事を最後までお読みいただければ、業者任せの状態から脱却し、自信を持って理事会をリードするための、実践的な知識とノウハウが身につきます。

 

なぜマンションの清掃品質は低下するのか?根本的な原因は「仕様書」にあった

清掃品質に関する不満が出てきたとき、その原因を「清掃スタッフのやる気」や「業者の質」だけに求めてしまうのは早計です。実は、問題の根源は、管理組合と清掃会社との間で交わされる「契約内容の曖昧さ」にあるケースがほとんどなのです。

多くの管理組合が陥る「業者任せ」の罠

「清掃業務一式」
契約書や見積書に、このような記載はありませんか?

これは、非常に危険な状態です。「一式」という言葉のもとでは、「どこを」「いつ」「どのような方法で」「どのくらいの頻度で」清掃するのかという具体的な基準が存在しません。これでは、清掃会社側の裁量ですべてが決まってしまい、品質が安定しなくても文句が言えないのです。

最初は丁寧だった作業も、時間が経つにつれて簡略化され、当初想定していた品質が維持されなくなる…。これが、多くのマンションで清掃品質が低下していく典型的なパターンです。適切なマンション管理を行う上で、この「業者任せ」の状態は真っ先に解消すべき課題と言えるでしょう。

仕様書が曖昧だと起こる3つの悲劇

具体的な清掃仕様書がない状態は、以下のような深刻な問題を引き起こします。

■悲劇1:清掃品質が安定しない、指摘しても改善されない
明確な作業基準がないため、担当するスタッフによって品質にバラつきが出ます。「廊下の隅にホコリが溜まっている」と指摘しても、「それは仕様の範囲外です」と反論されれば、それ以上強くは言えません。

■悲劇2:現在の料金が「適正価格」なのか判断できない
作業内容が不明確なままでは、提示されている料金が高いのか安いのか、客観的な判断ができません。他の業者から見積もりを取っても、前提条件が異なるため、純粋な価格比較ができず、結局「一番安いから」という理由だけで選んでしまいがちです。

■悲劇3:業者を変更しようにも、比較検討が非常に困難
いざ業者を変更しようとしても、新しい業者に「今と同じレベルで」としか伝えられません。これでは、新しい業者も正確な見積もりが出せず、結果的にオーバースペックな提案(高価格)や、逆に品質がさらに低下するリスク(低価格)を招きます。

良いマンション管理は、明確な清掃仕様書から始まる

これらの悲劇を回避し、質の高いマンション管理清掃を実現する唯一の方法が、「清掃仕様書」を管理組合主導で作成することです。

仕様書とは、いわば「清掃の設計図」です。この設計図があることで、初めて複数の業者を同じ土俵で比較検討でき、価格の妥当性を判断し、契約後も品質を厳しくチェックすることが可能になります。

理事長がこの仕様書の重要性を理解し、作成をリードすることが、業者見直しを成功させるための、最も重要で確実な第一歩なのです。

 

【理事長必見】資産価値を守る!清掃仕様書作成の5ステップ

「仕様書なんて、専門家じゃないと作れないのでは?」と不安に思う必要はありません。以下の5つのステップに沿って進めれば、誰でも実用的な仕様書を作成することができます。

ステップ1:現状の清掃状況を「見える化」する

まずは、現在の清掃が「できていること」と「できていないこと」を客観的に把握することから始めましょう。スマートフォンのカメラを片手に、マンションの共用部を巡回し、チェックリストを作成します。

【現状把握チェックリストの例】
□ エントランスのガラスは綺麗か?指紋や汚れはないか?
□ 集合ポストの上や隙間にホコリは溜まっていないか?
□ 共用廊下の床にゴミや砂は落ちていないか?
□ 階段の隅にホコリやクモの巣はないか?
□ 手すりは拭かれているか?ベタつきはないか?
□ 照明器具に虫の死骸は溜まっていないか?
□ エレベーター内の鏡やボタンは綺麗か?
□ ゴミ置き場は整理整頓され、悪臭はないか?
□ 駐車場や駐輪場に落ち葉やゴミはないか?
□ 植栽は手入れされているか?雑草は生えていないか?

このチェックリストは、他の理事にも共有し、複数人の目で確認することで、より客観的な評価ができます。写真も撮っておくと、後の理事会での説明資料として非常に有効です。

ステップ2:「どこを」「いつ」「どのくらいの頻度で」を決める

ステップ1で見えた現状を踏まえ、マンションの「あるべき姿」を定義していきます。清掃業務は、大きく「日常清掃」と「定期清掃」に分けられます。

■日常清掃:住民が毎日利用する場所の美観を維持するための、頻度の高い清掃。掃き掃除や拭き掃除が中心。
■定期清掃:日常清掃では落としきれない汚れを、専門的な機材や洗剤を使って除去する清掃。月に1回、数ヶ月に1回といった頻度で実施。

これらの清掃について、具体的な場所、作業内容、頻度を一覧表にまとめていきましょう。

日常清掃の項目例

マンションの規模や特性に合わせて項目をカスタマイズすることが重要です。

場所 作業内容 頻度
エントランスホール 床の掃き拭き、ガラス扉の拭き上げ、マットの清掃 週5回
共用廊下・階段 掃き掃除、手すりの拭き上げ 週3回
エレベーター 床の清掃、鏡・操作パネルの拭き上げ 週5回
ゴミ置き場 床の掃き掃除・水洗い、扉の拭き上げ 週2回(ゴミ収集日後)

定期清掃の項目例

専門的な作業が多いため、どのレベルまで求めるかを明確にします。

場所 作業内容 頻度
エントランスホール 床材に応じた専用機材による洗浄、ワックス塗布 6ヶ月に1回
共用廊下・階段 高圧洗浄機による床面の黒ずみ・コケ除去 1年に1回
照明器具・窓ガラス カバーの清掃、高所の窓ガラス清掃 1年に1回

ステップ3:特別清掃の必要性を検討する

日常・定期清掃のほかに、数年に一度のサイクルで必要となる「特別清掃」も視野に入れておきましょう。これらは長期修繕計画とも関連が深い項目です。

【特別清掃の例】
・外壁のタイル洗浄、高圧洗浄
・貯水槽の清掃
・排水管の高圧洗浄
・空調設備のフィルター清掃、分解洗浄

これらの作業は、日常清掃を請け負う業者が対応できる場合もあれば、別途専門業者に依頼する必要がある場合もあります。仕様書に含めるか、別途検討事項とするかを理事会で話し合っておきましょう。

ステップ4:住民からの要望を吸い上げるアンケートの実施

理事会だけで仕様書を完成させるのではなく、住民全体の意見を反映させることで、後の合意形成が格段にスムーズになります。簡単なアンケートを実施し、「特に綺麗にしてほしい場所」や「現在気になっている汚れ」などをヒアリングしましょう。

「住民の意見をきちんと聞いている」という姿勢を示すこと自体が、理事長の信頼性を高めることに繋がります。

ステップ5:仕様書のひな形を完成させる

ステップ1〜4で集めた情報を元に、仕様書のひな形を文書にまとめます。このひな形が、複数の業者から同じ条件で見積もりを取るための「共通の物差し」となります。完璧なものである必要はありません。まずは「たたき台」として作成し、業者からの提案を受けながらブラッシュアップしていく姿勢が大切です。

 

理事会も納得!失敗しない清掃業者の選び方と相見積もりのコツ

仕様書が完成したら、いよいよ業者選定のフェーズに入ります。ここで重要なのは、単なる価格競争に陥らないことです。質の高いマンション管理を実現してくれる、信頼できるパートナーとしての清掃会社を見極めましょう。

価格だけで選ぶのは危険!見るべき3つのポイント

安すぎる見積もりには、必ず裏があります。人件費を不当に削減していたり、必要な作業工程を省いていたりする可能性があります。価格と品質のバランスを見極めるために、以下の3つのポイントを重点的にチェックしてください。

ポイント1:現場調査の丁寧さと提案力

信頼できる業者は、見積もり提出前に必ず現場調査を行います。その際に、ただメジャーで測るだけでなく、

・床材や壁材の材質を確認しているか
・汚れの種類や原因を分析しようとしているか
・管理組合が気づいていない問題点を指摘してくれるか

といった点に注目しましょう。仕様書通りの作業をこなすだけでなく、より良い環境にするための「プラスアルファの提案」をしてくれる業者は、パートナーとして非常に心強い存在です。

ポイント2:担当者のレスポンスとコミュニケーション能力

清掃業務は、人と人との連携で成り立っています。何か問題が起きた際に、すぐに連絡がつき、迅速に対応してくれるかどうかは極めて重要です。

・問い合わせへの返信は早いか
・専門用語を使わず、分かりやすく説明してくれるか
・こちらの要望を真摯に聞き、意図を汲み取ってくれるか

見積もり段階での担当者の対応は、契約後の対応そのものであると考えましょう。

ポイント3:損害賠償保険への加入とスタッフ教育体制

万が一、清掃作業中にマンションの設備を破損してしまった場合や、居住者に怪我をさせてしまった場合に備え、損害賠償保険に加入しているかは必ず確認してください。

また、スタッフの品質を担保するために、どのような研修や教育を行っているのかを質問するのも有効です。マナー研修や技術研修の体制が整っている会社は、それだけ品質管理への意識が高いと言えます。

相見積もりを依頼する際の注意点

業者を比較検討する相見積もりは必須ですが、やみくもに数を増やせば良いというものではありません。

依頼するのは3社程度に絞る:あまり多いと、各社とのやり取りや比較検討に膨大な時間がかかり、理事の負担が増大します。

必ず同じ仕様書で依頼する:条件を統一しなければ、公正な比較ができません。「この仕様書に基づいて見積もりをお願いします」と明確に伝えましょう。

現在の業者にも声をかける:長年の付き合いがある現在の業者にも、新しい仕様書で見積もりを再提出してもらうのが筋です。これにより、価格やサービス内容を見直すきっかけになる可能性もあります。

見積書比較のチェックポイント

提出された複数の見積書を、以下の観点で比較検討します。一覧表にまとめると、理事会での説明がしやすくなります。

比較項目 A社 B社(現行) C社
合計金額(月額/税抜) 〇〇円 〇〇円 〇〇円
仕様書への適合度 完全に適合 一部未対応項目あり 完全に適合
プラスアルファの提案 植栽の簡易剪定を提案 特になし 特になし
担当者の対応 迅速・丁寧 (評価を記入) 普通
損害賠償保険 加入済み 加入済み 加入済み

 

【これで安心】総会での合意形成をスムーズに進めるための準備

理事会としての方針が固まったら、最終関門である総会での承認を目指します。一部の住民から「なぜ業者を変える必要があるのか」「費用が高くなるのではないか」といった意見が出ることも想定されます。理事長としては、感情論ではなく、客観的なデータに基づいて冷静に説明責任を果たすことが求められます。

なぜ清掃会社の見直しが必要なのか?ロジカルな説明資料の準備

総会では、これまでの経緯と目的を明確に伝えることが重要です。

現状の課題:ステップ1で撮影した写真や、住民アンケートの結果を示し、「清掃品質にこのような課題がある」ことを客観的に提示します。
見直しの目的:「単なるコスト削減が目的ではなく、明確な仕様書に基づいた適正な契約を結び、長期的な資産価値の維持・向上を目指すためである」と説明します。
選定プロセス:複数の業者を、作成した仕様書に基づいて公平に比較検討した、というプロセスの透明性をアピールします。

新旧の見積もりと仕様書を比較し、費用対効果を明確に提示

最も関心の集まる費用については、新旧の業者で「何がどう変わるのか」を分かりやすく示す必要があります。

たとえ月額の費用が多少上がったとしても、「これまでは含まれていなかった〇〇の作業が追加され、全体のサービスレベルが向上するため、費用対効果は高い」というように、メリットを具体的に説明しましょう。逆に費用が下がった場合は、「品質を落とさずに、これだけのコスト削減が実現できた」とアピールできます。

質疑応答シミュレーションで反対意見に備える

総会で出そうな質問や反対意見を、事前に理事会内でシミュレーションしておきましょう。

【想定される質問・反対意見】
Q.「今の業者さんで特に不満はないが、なぜ変える必要があるのか?」
→ A.「個人の感覚ではなく、アンケート結果や客観的な状況として品質低下が見られます。また、仕様書がない現状の契約は、長期的に見て管理組合にとってリスクがあります。」

Q.「新しい業者は信用できるのか?」
→ A.「現場調査の姿勢や提案内容、担当者の対応、保険加入状況などを総合的に判断し、最も信頼できると理事会で結論づけました。」

Q.「結局、費用が上がるではないか。」
→ A.「はい、月額〇〇円の増加となります。しかし、これまで実施されていなかった〇〇の清掃が追加されることで、マンション全体の美観が向上し、資産価値の維持に繋がります。1戸あたり月々〇〇円の負担増で、これだけのメリットが得られます。」

このように、論理的かつ具体的な回答を用意しておくことで、自信を持って総会に臨むことができます。

 

まとめ:適切なマンション管理と清掃は、理事長の手腕の見せどころ

輪番制で就任した理事長にとって、マンション管理、特に清掃業務の見直しは、非常に骨の折れる仕事かもしれません。しかし、これは理事長としてリーダーシップを発揮し、マンションをより良くするための絶好の機会でもあります。

今回ご紹介した「清掃仕様書」の作成から業者選定までのプロセスは、業者任せの曖昧な管理から脱却し、管理組合が主体となって資産価値をコントロールするための、最も効果的な手法です。

■現状を客観的に把握し、課題を「見える化」する。
■「清掃仕様書」という明確な基準を作る。
■価格だけでなく、品質や信頼性も踏まえて業者を比較する。
■論理的な説明で、理事会・総会の合意を形成する。

この一連のプロセスをやり遂げたとき、マンションの清掃品質は劇的に改善され、住民からの信頼も得られるはずです。それは、理事長としての大きな実績となり、今後のマンション運営における確かな礎となるでしょう。

 

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